飛ぶ鳥の献立

かく在りき 書くに溺れし 持て余す惰性と付き合うため

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

憩に浸る

兎に角、珈琲屋が好きである。華やいだカフェのような場所では無く、古き良き所謂“喫茶店”だ。最寄の駅前には2つの行き着けを拵えている。顔を出せば決まって近住であろう御年寄が週刊誌や競馬新聞などに興じ、其々の生活を垣間見ることができる。この自由な…

感冒

移り気な季節に呼応するが如く、私は風邪を引いてしまった。喉の痛みを感じた頃には時既に遅く、徐々に悪化の一途を辿った。元より鼻の弱い私だが、この鼻水の量の多き事には苦悶している。澄んだ外界の空気を取り入れんとするも、上手く呼吸の出来ないもど…

蜜柑

机の上に置かれたみかんは見事に熟しており、殺風景な自室に橙色の明かりを灯していた。冬の季語として古くから日本人に愛されるみかん。今年も彼らの旬がやって来た。目の前の一つを手に取り、よく揉み込む。こうすると甘くなるらしい。指先から、つんと甘…

寒空に降ゆ

11月の東京に初雪が観測された。54年ぶりだと言う。どうりでここ数日、寒き日に身を縮めている。もはや寒冷や降雪への嫌悪などを差し置き、「今年も冬が来た」ことを万人が認めざる負えぬ状況となった。冬はこれまでの陽気な日々を一変させ、空を灰色一色へ…